TRICHORDの背景 - (3) 人に目を向ける

Author: Zenji Kanzaki(神崎 善司)
Published:2007-06-14

はじめに

前回は、時を基軸にしたスケジュール管理と、その中での管理ポイントについて解説しました。連載最後の本稿では、時を基軸にしたスケジュール管理に更に人のモチベーションを考慮する点について解説します。

モチベーションへの配慮

生産性の根本は人にあります。どんな優秀なツールや開発環境よりも人のモチベーションに勝るものはありません。モチベーションのコントロールによって生産性はいかようにも変わります。しかし、モチベーションは何かをやれば直ぐにコントロール出来るものではありません。日々の細かい積み上げでモチベーションの低下を防ぐ事がやっとです。 モチベーションを挙げるためには些細なグッズやスナックなどを用意したり、プロジェクト内にイベントを用意してゲーム性を持たせたりしながら、プロジェクトメンバーの雰囲気をよくし、コミュニケーションを円滑にすることが重要です。

これを適用する事は大きなプロジェクト全体で行うことは難しいかもしれませんが、少人数のチームでは可能だと思います。

そのポイントは個々のメンバーの気持ちを何らかの方法を用いて表現してもらうことです。その方法も直接的なものではなく、顔のマークや絵などのメタファを用いて表現し、日報や週報または壁に貼るなどして習慣化することです。プロジェクト管理の難しさはほとんど人間関係にあると思いますが、このようなちょっとした工夫でプロジェクトの風通しが良くなります。これはプロジェクトの中で何でも言っていいという雰囲気を作り出すために利用出来ます。この雰囲気作りは早期のリスクを発見するためにはとても大事です。反対に官僚的なチームの場合はリスクの発見が遅れる事がよくあります。

このようになかなか捕らえどころのないモチベーションに注意を向ける事が人の視点で大事な事です。

緩急の変化とサイクル

人は長い間緊張状態を続ける事が出来ません。また集中力もそんなに続きません。人の作業には波があります。スケジューリングにおいては人の作業にリズムをつけることがとても大事です。 みなさんも経験があると思いますが、人は締め切り前になると集中してそれに取り組み、何とか達成しようとします。そしてあと一息というときには時間を忘れて取り組みます。筆者も時間をかけた仕事が後一歩で終わると言うときは「その日の内に何とか終わらせるぞ」と集中して仕事を完了させます。逆に目的を達成してしまうと一気に作業のペースが落ちてしまいます。しかし、それを平準化させて常に一定の成果物を求めるのはあまり得策ではありません。それを行うとメリハリのないだらだらとした作業になり、平均すると反って効率が悪くなったり、成果物の出来が悪くなる事があります。人は機械のようには行きませんので、理屈ではうまくいきそうでも、実際にはそう理屈どうりにはいかないものです。

このように波のある人の作業をうまくサイクルとして利用し、積極的にチームにリズムをつくるように仕向けていくことが大切です。

まとめ

現在のように不確定要素の多い状況の中ではスケジュール管理を「とき」「こと」「ひと」の3つのシンプルな側面で捕らえ、それをWhatとHowの視点から階層化します。「こと」の分類を様々なロールに対応させ、それを階層化された時間間隔で扱います。そして、分かる範囲で次のステップに進み、その中で多少の手戻りはあっても軌道修正しながらゴールに向かってプロジェクトを推進します。これがTRICHORDの背景にある考え方です。

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